マクロファージが活躍!?フコイダンが体に取り込まれるしくみ

フコイダンのお話

こんにちは。

フコイダンを摂取したときの体への影響(整腸作用や免疫調整など)についての研究は
たくさん見られますが、そのフコイダンは口から入ったあと、
体のどこからどのように取り込まれているのでしょうか。

今回は、フコイダンの吸収のしくみについてまとめてみました。  


フコイダン摂取と吸収のこれまでの研究について

フコイダンは海藻に含まれている硫酸化多糖類(構造の中に硫酸基が結合した多糖類)です。
これまで、抗炎症作用、抗凝固作用、抗酸化作用など、
いろんな働きをすることが明らかになっています。
一方で、フコイダンの体内への取り込まれ方について調べた研究はほとんどありません。

フコイダンのような分子量が大きい(サイズが大きい)多糖類は、
口から摂取した後は体に吸収されないと考えられていた時がありました。

しかしその後、フコイダンの測定方法が開発されて、血液や尿からフコイダンが検出されました。
口から入った成分が血液や尿から検出されるということは、
その成分が一度体内に吸収されたことになるので、
フコイダンは消化管から体内に吸収されるのではないかと考えられるようになりました。

 

フコイダンは小腸から吸収される

Caco-2カコツー細胞とは、小腸に似たはたらきを持つ培養細胞です。
これを使ってフコイダンが小腸から吸収されるのか(小腸の壁を通過するのか)を実験で調べました。

さまざまな濃度(0.1〜2.0mg/ml)のフコイダンで確認した結果、
Caco-2細胞を横切るフコイダンの輸送は1時間後に最大になり、
その後3時間後に通常の状態に戻りました。

下の図は、Caco-2細胞を通過したフコイダンの量の累積値を表したものです。
Caco-2細胞を通過したフコイダンの量は、フコイダン濃度が0.1mg/ml、0.5mg/mlよりも、
1.0mg/ml、1.5mg/ml、2.0mg/mlの方が有意に高くなりました。


小腸に似たはたらきを持つCaco-2細胞をフコイダンが通過したことが確認されたことから、
フコイダンは小腸から吸収されると考えることができます。

 

フコイダンは小腸から吸収された後、肝臓に移動する

次に、動物を用いた実験も行われました。
ラットにフコイダン濃度2%の飼料を1週間および2週間与えて、血清と肝臓を分析しました。

その結果、フコイダンを与えたラットの血清と肝臓でフコイダンが検出され、
フコイダンを与えなかったラットでは検出されませんでした。

また、小腸の一部を染色してフコイダンが取り込まれた場所を確認したところ、
空腸くうちょう(小腸の一部で胃に近い前半部分)で確認されました。
下の図のAとCは、空腸の上皮細胞じょうひさいぼう(表面の細胞)の様子です。
茶色に染まっているのがフコイダンです。
BとDは、空腸の粘膜固有層ねんまくこゆうそう(上皮細胞の下にある層)の様子です。



同様に肝臓の一部も染色してみると、
フコイダンを与えたラットの肝臓でフコイダンが検出されました。


この結果から、動物実験でもフコイダンが小腸から吸収されると考えることができます。
肝臓でもフコイダンが検出されたことから、
フコイダンは小腸で吸収されて、肝臓に移動すると考えることができます。


フコイダンはマクロファージに取り込まれて運ばれる

フコイダンは、免疫細胞のマクロファージにある受容体(物質を受け取る場所)に結合する性質があるため、マクロファージに取り込まれている可能が考えられます。

先ほどの動物実験でも、細胞や組織の構造を見てみると、フコイダンを与えたラットでは
クッパー細胞(肝臓に存在するマクロファージ)が作られていることが観察されています。
またマクロファージは単核細胞ですが、小腸の単核細胞でもフコイダンが検出されています。
このことからも、マクロファージがフコイダンの輸送に関わっているのではと推察されました。

そこで、小腸と肝臓でフコイダンとマクロファージを同時に染色する実験をしたところ、
それぞれ同じ場所で検出されました。
この結果から、フコイダンはマクロファージに取り込まれて体内を輸送しているのではないか
と考えることができます。


まとめ

マクロファージはウイルスなどを取り込んでやっつけるというイメージが強かったのですが、
フコイダンを運ぶという役割もあるんですね。
マクロファージはフコイダンだけじゃなくて、
ヘパリンなどの他の硫酸化多糖類の取り込みも行っているそうです。

マクロファージがフコイダンを取り込むことで、
マクロファージが起こす炎症をフコイダンによって抑えられているのではという考察もあり、
本当に体の中の仕組みは複雑だなと感じました。

今回参考にした文献では、実験で確認したラットの小腸は一部しか見ていないため、
より詳しく吸収の場所を知るには腸全体を調べる必要があると記載がありましたので、
参考程度にお読みいただけると幸いです。

では、またの投稿をお楽しみに。  


参考文献

Takeaki Nagamine et al, Intestinal Absorption of Fucoidan Extracted from the Brown Seaweed, Cladosiphon okamuranus, Mar. Drugs 2015, 13, 48-64 ※一部図を抜粋し日本語に編集

 

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