デング熱ウィルスに対するフコイダンの効果は静岡県立大学の左先生のグループによって2008年に報告されています。リクエストにお応えして説明しますね。
左先生のグループは地球温暖化によって、熱帯性のウィルスが北上してくることを想定して、抗ウィルス剤の研究を行っています。実際、デング熱を媒介するヒトスジマイカは日本にもいて、生息域が北上しています。今回、東京でデング熱の感染者が発見されたことは先生の予想どおり日本でも熱帯性のウィルスが広がってくることを示しています。
デング熱ウィルスにはエンベロープと呼ばれる糖タンパク質があり、これが宿主細胞と結合して感染が始まります。エンベロープが宿主細胞ではない、別の成分と間違って結合したら感染は起こりません。そのため、エンベロープと結合する成分が感染阻止剤になります。
デング熱ウィルスのエンベロープに結合する成分として、ヘパリンが明らかになっていました。ヘパリンはグルコサミンに硫酸基が結合した多糖です。オキナワモズクフコイダンもフコースに硫酸基とグルクロン酸が結合した多糖です。
デング熱ウィルスの感染阻害作用のメカニズムを明らかにするため、フコイダン(Fucoidan)とフコイダンから硫酸基を除去した成分(FD)、グルクロン酸のかわりにグルコースを結合させた成分(FC)、そして、硫酸基とグルクロン酸を除去した成分(Fucan)を合成して感染阻害作用を比較しました。その結果、フコイダンが最も阻害活性が強く、続いて硫酸基を除去した成分でした。グルクロン酸のかわりにグルコースを結合した成分と硫酸基とグルクロン酸を除去した成分はまったく阻害作用を示しませんでした。
このことから、デング熱ウィルスの感染阻害作用には硫酸基とグルクロン酸残基が必要であることがわかりました。他の海藻由来のフコイダンはグルクロン酸が結合していないのでデング熱ウィルスの感染阻害作用を持つフコイダンはオキナワモズク由来のみということになります。
◎参考文献
Biochemical and Biophysical Research Communications 376 (2008) 91‒95
生化学 第82巻 第8号 (2010)751-755