機能性のカギ!?多糖類に含まれる硫酸基の働き

いろいろ

こんにちは。

フコイダンをはじめとする硫酸化多糖類は、さまざまな生理活性がありますが、
それは、その構造の中に硫酸基(SO42-)という部分があることが大きく関係しているそうです。

今回は、多糖類に含まれる硫酸基の存在と生理活性の関係についてまとめてみました。


はじめに(硫酸化多糖類について)

硫酸化多糖類は、硫酸化された(構造の中に硫酸基(SO42-)が存在する)多糖類のことです。
硫酸基は、硫酸(H2SO4)分子の一部で、硫黄(S)と酸素(O)からなる組み合わせです。

硫酸(H2SO4)分子は、下の図のような構造をしていて、
水素(H)原子が離れて、硫黄原子(S)が4つの酸素原子(O)に結合している形が、
硫酸基(SO42-)です。


硫酸基は酸性の性質を持つので、硫酸化多糖類は酸性多糖類ともいいます。
フコイダンの構造の中にも硫酸基があるので、フコイダンも硫酸化多糖類の一つです。

硫酸化多糖類は、さまざまな種類が自然界の動物や植物に多く存在しています。


自然界に存在する硫酸化多糖類

硫酸化多糖類は、動物では細胞周囲や細胞表面などに存在し、
細胞間の情報交換や細胞接着、病原体に対する防御作用などがあると考えられています。
植物や海藻では、組織の構造維持や外部因子からの防御機構として働いていると考えられています。

動物由来の硫酸化多糖類の一つであるヘパリンは、硫酸基を多く含んでいます。
ヘパリンは血液抗凝固剤として広く用いられ、それ以外にも様々な生理活性を示しています。
医薬品として活用されることもあり注目を集めていることから、
これまでヘパリン様物質(ヘパリンと似た生理活性を持つ物質)の研究がされてきました。
ヘパリン様物質としては、動物由来、植物由来、合成によるものが知られています。

デルマタン硫酸も動物由来の硫酸化多糖類の一つ。
抗トロンビン薬(血液凝固を抑える働き)として臨床で用いられています。

海藻由来の硫酸化多糖類であるフコイダンは、
抗トロンビン作用(血液凝固を阻害する作用)や抗感染作用があると言われています。

同じく、海藻由来の硫酸化多糖類であるカラゲナンは、
ゲルを形成する特性を持ち、食料や医薬品、工業原料として広く用いられています。


硫酸基があると活性も変わる

動物由来の多糖類の一つに、ヒアルロン酸があります。
ヒアルロン酸は硫酸基を含みませんが、化学的に硫酸化したヒアルロン酸は、抗ヒアルロニターゼ活性(ヒアルロン酸の分解を阻害する作用)などの生理活性を示すことが報告されています。

カニやエビなどの甲殻類の殻や昆虫の外骨格などに存在する多糖類に、キトウサンがあります。
キトウサンも硫酸基を含みませんが、化学的に硫酸化されたキトウサンは、
ヘパリンと似た生体活性を示すことが知られています。

また、海藻やキノコに含まれる多糖類であるラミナリン。
硫酸基を含まないラミナリンですが、化学的に硫酸化されると、
ヘパリンと似た特性を有することが報告されています。


構造と活性の関係を実験で確認(結論:硫酸化で活性が変化)

硫酸基を含まない多糖類を化学的に硫酸化させると、ヘパリンと似た性質があらわれることから、
硫酸化多糖類の構造と活性の関係を調べるために、天然の単純多糖を硫酸化させ、
その活性の変化を調べました。

調べた多糖類は、キシラン、アミロース、セルロース、カードラン、硫酸化ガラクタンの5つ。
それぞれの多糖類を硫酸化させた後の抗凝固活性と、
抗ヒアルロニターゼ活性(ヒアルロン酸の分解を阻害する作用)について調査しました。

その結果、抗凝固活性については活性が見られ、
活性の強さはヘパリンと比べて4分の1程度であることがわかりました(グラフの黒いバー)。
1→4、1→3は、多糖類の構造の違い(糖分子の結合の仕方)を示しています。
グラフのしま模様のバーは、多糖類を硫酸化させた後に、
脱硫酸化をした(硫酸基を外した)場合の活性を示しています。


抗ヒアルロニターゼ活性(ヒアルロン酸の分解を阻害する作用)については、
それぞれで濃度依存的にヒアルロニターゼの阻害が確認されました。

この結果から、多糖類を硫酸化させるとその活性が変化することが確認され、
硫酸化多糖類の構造と活性の関係を裏付けることができました。


まとめ

フコイダンなどの多糖類には、様々な生理活性がありますが、
それは構造内の硫酸基の存在が影響していたんですね。
しかも、硫酸基が構造上のどの部分にどのくらい結合しているかによっても、
その生理活性の強さも変わってくると考えられています。

メカニズムとしては、構造が変わると多糖類とタンパク質が結合することができ、
結果として生理活性も変わってくるそうです。
構造の話は複雑で少し苦手な分野なんですが、
生理活性に大きく関係しているということで、このテーマを取り上げてみました。

フコイダンのさまざまな生理活性も、構造内の硫酸基の存在の影響があるとも言えますよね。
フコイダンの生理活性が注目されているときは、
硫酸基も関係しているのかな、という視点も持ちたいと思いました。

では、またの投稿をお楽しみに。


参考文献

Toida et al, Trends in Glycoscience and Glycotechnology Vol.15 No.81 (January 2003) pp.29-46 
※一部図を抜粋し日本語に編集

 

関連記事
 

イメージテキスト

本場・沖縄県で、オキナワモズクやフコイダンの生産と研究開発に積極的に取り組むサウスプロダクトが、その魅力や特性を科学的にわかりやすくご紹介。
産地ならではのLive感いっぱいで、お届けします。