海藻が農業資材に!?フコイダンを含む海水濃縮物の作物生育に与える影響

フコイダンのお話

こんにちは。

ヒトの健康にいいと言われる海藻。
食べることのイメージが強いですが、農業に利用する研究も行われています。

今回は、脱塩海水濃縮物が作物生育に与える影響についてまとめてみました。




はじめに

海藻を土壌改良剤や肥料などの農業資材として利用することは、
古くから国内外で行われてきました。
ヨーロッパでは農業資材として利用するために、海藻の養殖も行われていたほどです。

現在は化学肥料が普及したことで、海藻自体を肥料にすることは少なくなってきましたが、
海藻を原料にした肥料が流通しています。
それらは製造方法によって、粉末や液体といった形態があります。
海水から塩分を除き、海水由来ミネラルを濃縮した液体”脱塩海水濃縮物”もその一つです。


また、作物を栽培するときにアケビ発酵液を利用すると、
発根が促進されることが報告されています。
アケビはつる性低木の植物で、果実は食用として利用されています。(下部イメージ画像)。


アケビの実は熟すると果皮が割れ、中身が露出します。
果実の中身が露出しても実が腐らないのは、酵母膜によって保護されているからいう報告があり、
アケビは自然界でも強力な酵母を有すると言われています。


今回は、海藻由来フコイダンが含まれる脱塩海水濃縮物が作物に与える影響と、
アケビ発酵液に与える影響について、2019年に報告された内容をまとめてみました。


トマトのリコピンが増加

ミニトマトに希釈した脱塩海水濃縮物を葉面散布したところ、
リコピンの数値が非処理区6mg/100gに対し、処理区10mg/100gとなりました。

その他の成分は、灰分(ミネラルのこと)、直接還元糖(糖類の一種)、総ビタミンCが
処理区で微増しました。

基礎成分(エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム、食塩相当量、水分)は、
変化がありませんでした。

リコピンが増加したのは、
脱塩海水濃縮物に含まれるミネラルがトマトに影響をもたらしたと考えられています。


アケビ発酵液の発酵力が促進

アケビ発酵液に脱塩海水濃縮物を添加して発酵状況を調べたところ、
気泡の発生が促進され、発酵が促進されていることが確認されました。

脱塩海水濃縮物に含まれるミネラルが、アケビ発酵液の発泡性に関わる微生物や
酵母の生育に良い影響を与えていることが考えられています。

ちなみに、ブドウの根にアケビ発酵液を希釈した液に3日間浸すと、
総ポリフェノール量が有意に増加したという報告があります。
イネに用いると根の張り方が良くなったという結果も得られています。


まとめ

今回参照した文献をよく見ると、フコイダンが影響したとは直接的に明記はありませんでした。
トマトのリコピン増加やアケビ発酵液の発酵促進は、
文献で触れられていたように、フコイダンではなくミネラルが直接作用した可能性が高そうです。

ただ、フコイダンは腸内細菌のバランスを整える作用があるので、
アケビ発酵液の発酵促進には何らかの影響はあったのではないかな、と個人的に思いました。
アケビ発酵液で変化がみられたのなら、他の発酵食品とかにも応用できるかもしれないですね。

海藻の農業利用について調べているとその歴史は長く、
多くの国で行われていることがわかりました。
海藻肥料の効果については、1960年以降に報告が見られるようになったそうです。
脱塩海水濃縮物は、今回参照した文献ではフコイダンを製造するときに排出される残渣ざんさから
作られたものでした。
製造過程で排出されるものを活用することは、今話題のSDGsにつながりますね。

海藻の可能性はまだまだありそうです。

では、またの投稿をお楽しみに。


参考文献

桑守ほか, 美作大学・美作大学短期大学部地域生活科学研究所所報 15, 56-63, 2019
桑守ほか, 美作大学・美作大学短期大学部地域生活科学研究所所報 13, 11-15, 2016
大野正夫, 有用海藻誌 海藻の資源開発と利用に向けて, 内田老鶴圃, 2004

 

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