いつが多い?収穫時期によるフコイダン含量の変化

モズクのお話

こんにちは。

オキナワモズクは、海藻の中でもフコイダンが多く含まれていますが、
同じオキナワモズクでも、収穫時期によってフコイダン含量に違いはあるのでしょうか。

今回は、モズクの収穫時期によるフコイダン含量の変化についてまとめてみました。

はじめに

海藻に含まれる多糖(フコイダンなどの成分)は、品種の違いや、
同じ品種でも採取場所、生育環境、収穫時期の違いによって、
その構造や化学組成が大きく変化することが知られています。

例えば、コンブのフコイダン含量は4月〜9月の間は増加。
10月になると藻体の成長とともに急激に増加します。

また、ワカメのフコイダン含量は4月から7月にかけて変動します。
アカモクのフコイダン含量は生育過程で変動し、
生殖器床(生殖器官が形成される部位)の出現後に急増することが報告されています。

オキナワモズクは沖縄県における代表的な養殖漁業ですが、
これまでにオキナワモズクの収穫時期の違いによるフコイダン分析に関する情報はありませんでした。

そこで、オキナワモズクに含まれるフコイダンの分析を行い、
収穫時期によるフコイダン含量の変動や構造の変化について検討を行いました。




試験の方法

オキナワモズクの藻体は、沖縄県南城市志喜屋地先で2006年1月下旬から5月上旬の間、
2週間ごとに採取したものを使用しました。

種付け(陸上の海水プールで網にモズクの胞子をつける作業)は10月下旬に行われ、
その後およそ3ヶ月、海で成長したオキナワモズクを1月下旬に収穫しました。

採取したオキナワモズクの水分含量、粗フコイダン含量、粗フコイダンの糖と硫酸含量、
分子量を測定しました。

収穫時期が遅いとフコイダン含量が多くなる

まず、水分含量を調べた結果、
1月、2月に収穫されたオキナワモズク藻体の水分含量は95%でしたが、
3月17日に収穫された藻体では93.8%となり、3月以降わずかに減少しました。
その後、5月10日に収穫された藻体の水分含量は92.2%にまで減少しました。

次に、フコイダン含量(藻体の乾燥重量あたりで算出)を調べた結果、
フコイダン含量は1月26日、2月14日、2月28日に収穫された藻体では、
それぞれ18%、17%、18%と一定でした。

しかし、3月以降、収穫時期が遅くなるにつれてフコイダン量は徐々に増加し、
5月10日に収穫された藻体ではフコイダン含量は28%となり、最も高い値を示しました。



収穫時期が遅いとフコイダン分子量は低くなる

フコイダン分子量は、1月26日に収穫された藻体で84.5×104でしたが、
しだいに高分子化し、4月4日で最大値107×104を示しました。

それ以降は低分子化され、5月10日に収穫されたサンプルでは46.0×104となり、
1月26日に収穫された藻体のフコイダンの分子量の半分にまで低分子化していました。


また、フコイダン中の硫酸含量を調べたところ、
1月から4月4日までに収穫された藻体では約20%でしたが、
4月18日以降は減少し、5月10日に収穫された藻体では16.8%まで減少しました。

フコイダン中の糖量は、収穫時期による違いは見られませんでした。


考察(ぬめりは高分子なフコイダンほど強い!?)

オキナワモズク藻体の平均水分量は94%であり、水分含量が高いことが知られています。

今回の結果から、水分含量は収穫時期が遅くなるにつれて、
わずかですが減少する傾向にあることがわかりました。
この水分含量の低下は、藻体の老化にともなって起こる可能性が考えられます。

また、フコイダンの収量はオキナワモズクの収穫時期によって変動し、
5月に収穫された藻体のフコイダン含量は3月に収穫された藻体に比べて、
湿重量で換算すると2倍高いことがわかりました。

フコイダンの分子量も、藻体の収穫時期により変動し、
収穫時期が遅くなる(藻体が老化する)と低分子化することがわかりました。

オキナワモズクの「ぬめり」はフコイダンによるものです。
収穫最盛期の4月前後では藻体のぬめりが増加しますが、
収穫最盛期を過ぎるとぬめりがなくなり、パサつくことが観察されています。

しかし、フコイダンの収量は収穫時期が遅い藻体ほど高くなりました。

このことから、オキナワモズクのぬめり気はフコイダンに起因するものの、
フコイダンの収量よりも、フコイダンの硫酸含量や分子量の大きさに起因するものと推察されます。

まとめ

フコイダンは、同じ品種由来でも収穫時期によって、含量に違いがあることがわかりました。
あの「ぬめり」は、フコイダン含量よりは、フコイダンが高分子かどうかによるんですね。

たしかに、収穫時期が違うモズクを触ったことがありますが、
収穫最盛期のモズクはぬめりが強くて、収穫終盤のモズクはパサついている印象を受けました。
食べたときも、やっぱりぬめりが強い方が、磯の香りも感じられておいしいと思いました。

収穫時期だけでなく、採取場所、生育環境の違いによっても変わってくるらしいので、
どの場所でどういった環境で育ったら、フコイダンがより多くなるのか知りたくなりますね。

では、またの投稿をお楽しみに。


参考文献

収穫時期の異なるオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus Tokida)に含まれるフコイダン含量の変動と構造の変化, 辻ほか, 応用糖質科学, 第3巻, 第4号, 248-252 (2013)

 

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