こんにちは。
フコイダンには、私たちヒトの免疫機能の向上や生理活性の改善作用があることは
知られていますが、魚に対しても同じような作用があると報告されています。
今回は、コイにフコイダンを摂取させ、その変化を観察した研究についてまとめてみました。
はじめに
水産養殖の現場では、安全な物質を用いた養殖魚の
生体防御活性(病気などから体を守ること)や生理状態改善(体の状態を整えること)の
方法が求められています。
過去の研究で、コンブやアオサの粉末や抽出物を添加した飼料で魚を飼育し、
抗病性向上効果や生理改善作用があることが報告されています。
また、コイの腹腔内にツノマタ(紅藻類の一種)の抽出物を投与すると、
細菌接種時の生残率が向上することも報告されています。
そこで、コイにフコイダンを経口投与させ、生体防御活性や生理機能に及ぼす影響を調べました。
試験の方法
コイに、市販飼料にガゴメ由来フコイダンを混ぜた餌を、
体重の2%量になるよう調整して4週間飼育しました。
フコイダンの量は、0.05%(低フコイダン区;Low-F)、
0.25%(中フコイダン区;Med-F)、1%(高フコイダン区;Hi-F)の3区画に分けました。
また、市販飼料のみを与えたものを対照区としました。
実験開始から2週間目と4週間目に採血を行い、
赤血球数や顆粒球(白血球の一種)数、リンパ球数などを計測しました。
また、顆粒球の貪食能や、ナチュラルキラー(NK)様細胞の活性を測定しました。
免疫に関わる細胞が活性化
コイにフコイダンを経口投与した結果、
対照区およびフコイダン投与区とも、実験期間中に行動や外観に異常は認められず、
餌食いも良好でした。
フコイダン投与から2週目の高フコイダン区でリンパ球数が有意に増加し、
4週目では中フコイダン区と高フコイダン区でリンパ球数および顆粒球数が有意に増加しました。
顆粒球の貪食能は、
2週目の中フコイダン区と高フコイダン区、
4週目の全てのフコイダン投与区で有意に上昇しました。
NK様細胞活性は、
2週目の低フコイダン区と高フコイダン区、
4週目の中フコイダン区と高フコイダン区で有意に上昇しました。
血しょう中のリゾチーム(溶菌現象をおこす酵素)活性は、
4週目の低フコイダン区、高フコイダン区で有意に上昇しました。
体内の脂質濃度が低下
また、生理状態の改善を観察するために、脂質に関わる数値も調べました。
その結果、血しょう中の総脂質濃度が、
フコイダン投与から2週目の高フコイダン区、
4週目の全てのフコイダン区で有意に低下しました。
血しょう中の過酸化脂質濃度は、
4週目の中フコイダン区と高フコイダン区で有意に低下しました。
血しょう中のGOT活性は、
2週目の中フコイダン区、4週目の全てのフコイダン区で有意に低下しました。
(※GOT:主に肝臓細胞に含まれる酵素。ウイルスなどで肝臓細胞が壊れると血液の中に漏れ出てくるため、肝臓のダメージを確認することができます。)
考察
フコイダンを経口投与したコイでは、免疫細胞であるリンパ球や顆粒球の数が増加し、
顆粒球の貪食能、NK様細胞活性、および血しょう中のリゾチーム活性が上昇しました。
この結果から、フコイダンを連続的に経口投与すると、
2〜4週間でコイの生体防御活性が増強されることが示されました。
また、血液中のGOT活性が低下したことは、フコイダンの投与がHGF(肝細胞増殖因子)産生の誘導を介して、肝機能などを改善する可能性があることを示しています。
したがって、フコイダンには生体防御活性を高めるだけでなく、
脂質代謝や肝機能等を含めた広い範囲の生理状態を改善する作用があることが示唆されました。
まとめ
フコイダンは、私たちヒトだけでなく、魚の健康にも良い作用をすることがわかりました。
観賞用の魚に使うフコイダン用品があるのもそのためなんですね。
ちなみに、魚類における似たような実験として、
ハマチ、マダイ、クロダイにアオサやコンブの粉末を投与すると、成長は変わらないものの、
抗病性の増大や低酸素耐性の向上、体脂質量の調整などが確認されたようです。
他の生き物にも同じような作用があるのか気になってきますよね〜。
また情報があれば紹介できればと思います。
では、またの投稿をお楽しみに。
海藻多糖フコイダン投与による魚類生体防御活性の増強および生理状態改善, 角田 出, 水産増殖 52(4), 413-420 (2004) ※一部図を抜粋し日本語に編集。