ここまでわかった!オキナワモズクの遺伝子情報

モズクのお話

こんにちは。

一言で「モズク」と言っても、
イトモズク、フトモズク、オキナワモズクなど様々な種類があります。
その中の「オキナワモズク」は、さらに4つの種類に分けることができます。

この4つの種類の遺伝子を調べた論文が2020年に発表されていますので、
今回はオキナワモズクの遺伝子についてまとめようと思います。

はじめに

近年、地球環境は主に人間の活動によって変化しており、
農業や下水による汚染は海水の質を低下させ、サンゴ礁に脅威をもたらします。

沖縄で栽培されている「オキナワモズク」と「イトモズク」は、
サンゴ礁に近い海岸沿いで生息しているため、その養殖も脅かされています。

環境の変化によるオキナワモズクの影響を考えると、
さまざまな生物学的特徴を持つ株を特定して維持することが不可欠となっています。

オキナワモズクには、S株、K株、O株、C株と呼ばれる4つの株が栽培されています。




S株のドラフトゲノム(全ゲノムの概要)は2016年にすでに報告されていることから、
他の3つの株(K、O、C)のゲノムを調べました。


4つの株のゲノム構成要素

まず、4つの株のゲノム(DNAのすべての遺伝情報)を調べました。

S株のゲノムは130Mbp(bp:DNAの大きさの単位)で、
12,999個のタンパク質遺伝子があると推定されました。

K株のゲノムは135Mbpで、12,511個の遺伝子、
O株のゲノムは140Mbpで、12,548個の遺伝子、
C株のゲノムは143Mbpで、12,182個の遺伝子があると推定されました。

反復配列(同じDNA配列が繰り返し見られること)は、
S株、K株、O株、C株の遺伝子で、
それぞれ11.2%、9.9%、11.5%、12.6%を構成すると推定されました。

オキナワモズク4株の中で小さいS株ゲノム(130Mbp)には、
11.2%の反復配列が含まれていたのに対し、
中型のK株ゲノム(135Mbp)には9.9%の反復配列が含まれていたことから、
ゲノムサイズの違いは反復配列の数に関連していないことが示唆されました。

4つの株の分子系統学

次に、4つの株がどのように進化してきたのかを調べました。

その結果、オキナワモズクはモズク(イトモズク)と、
異なるクレード(共通の祖先から進化した生物群)を形成していることがわかりました。

さらに、
オキナワモズクの中でも4つのクレードを構成していました。
S株が最初に分岐し、次にK株、最後にC株とO株が分岐したことがわかりました。




4つの株のゲノム構造の類似性

また、オキナワモズク4株の類似性を調べました。

その結果、オキナワモズクの4つの株はそれぞれ、90%を超える類似性が示されました。

オキナワモズクに遺伝子的に近い品種と比較すると、
オキナワモズクS株とモズク(イトモズク)の類似性は約50%、
オキナワモズクC株とシオミドロの類似性は7%未満であることがわかりました。

下の図は、青いバーがそれぞれの遺伝子を表していて、
隣の遺伝子との類似性を色で示しています。
緑が濃くなると類似性が高く、赤が濃くなると類似性が低いことを示しています。



考察と結論

オキナワモズクの4株のゲノム分析によって、
それぞれで固有の遺伝子を持っていることが明らかになりました。
また、系統発生分析によって、S株が祖先株に近いことが示されました。

さらに、4株それぞれの遺伝子には、
特異的な遺伝子群を2〜3.5%含んでいることも示唆されました。
この割合は、シロイヌナズナ(0.79%)よりも高くなっています。

オキナワモズクの4株は形態が異なるため、
それぞれの特異的な遺伝子は、その形態に関連するものである可能性が考えられていますが、
詳細はまだわかっていません。

この研究で報告されたゲノム情報は、新しい株の開発や特徴づけに役立つことが期待できます。

まとめ

オキナワモズクには4つの株があり、それぞれの遺伝子配列の特徴や違いが明らかになりました。

遺伝子を調べることで、この4つの株がどう進化していったかがわかってすごいですね。
また、それぞれで特異的な遺伝子を持っていることが面白いと思いました。

オキナワモズクの遺伝子って、ここまでわかって来たんだなーと驚きです。
さらに研究が進んで、4つの株それぞれに適した栽培方法とかがわかると、
オキナワモズク生産の効率も上がるかもしれないですね。

新しい情報を見つけましたら、ご紹介できればと思っています。

では、またの投稿をお楽しみに。  


参考文献

Comparative genomics of four strains of the edible brown alga, Cladosiphon okamuranus, Koki Nishitsuji et al, BMC Genomics (2020) 21:422 ※一部図を抜粋し日本語に編集。

 

関連記事
 

イメージテキスト

本場・沖縄県で、オキナワモズクやフコイダンの生産と研究開発に積極的に取り組むサウスプロダクトが、その魅力や特性を科学的にわかりやすくご紹介。
産地ならではのLive感いっぱいで、お届けします。