フコイダンでバリア!ピロリ菌の胃細胞付着に対する阻害作用

フコイダンのお話

こんにちは。

前回の投稿の中で、
フコイダンはピロリ菌が胃に付着することを阻害していることについて少し触れました。

今回は、このフコイダンによるピロリ菌の付着阻害作用を調べた研究について、まとめてみました。

 

はじめに

胃の粘液に生息するピロリ菌。

ピロリ菌が胃の表面で集団(コロニー)を作ると、胃炎や胃潰瘍につながることがあります。
この集団を作るためには、ピロリ菌が胃の表面細胞にくっつくことが重要なステップとなります。

ピロリ菌が胃に付着するときは、胃の表面細胞にあるスルファチド(糖脂質の一種)やルイス抗原(アミノ酸や単糖の配列)などを認識して結合します。

硫酸化多糖類は、ピロリ菌に強く付着したり、他の物質との結合を阻害することが報告されています。オキナワモズクに含まれているフコイダンも、硫酸化多糖類の一種であることから、ピロリ菌と胃の表面細胞の結合を阻害することが考えられています。

そこで、フコイダンにピロリ菌の胃細胞付着に対する阻害作用があるかを調べました。  


 

ピロリ菌と胃細胞の結合に対する阻害効果

まず、ピロリ菌と胃細胞の結合に対するフコイダンの阻害について調べました。
胃の細胞株(KATOIII、MKN28)を、フコイダンを含む数種類の炭水化物を添加したピロリ菌液と、なにも添加していないピロリ菌液でそれぞれ培養し、胃細胞に結合したピロリ菌を測定しました。

その結果、KATOIII細胞とMKN28細胞の両方で、フコース以外の炭水化物でピロリ菌の結合が阻害されました。

また、MKN28細胞の結果から、オキナワモズク由来フコイダンの阻害効果は、ヒバマタ由来フコイダンよりも大きいことが示されました。




 

ピロリ菌とルイス抗原との結合に対する阻害効果

ピロリ菌が胃細胞に結合するときは、胃表面のルイス抗原やスルファチドなどを認識していることから、それぞれに対する結合の阻害効果も調べました。

まず、ルイス抗原との結合に対する阻害について。

オキナワモズク由来フコイダンは、ピロリ菌とルイス抗原との結合に対する阻害効果が観察されました。一方、他の炭水化物では阻害効果は見られませんでした。


 

ピロリ菌とスルファチドとの結合に対する阻害効果

次に、スルファチドとの結合に対する阻害について。

硫酸デキストランは、ピロリ菌とスルファチドの結合に対する強い阻害効果が観察され、
オキナワモズク由来フコイダンも結合の阻害が確認されました。

一方、他の炭水化物では阻害効果は観察されませんでした。


考察

オキナワモズク由来フコイダンは、
KATOIII細胞とMNK28細胞の両方で、ピロリ菌付着を強く阻害することがわかりました。
また、胃細胞表面に発現したルイス抗原とスルファチドに対するピロリ菌付着を、両方とも阻害しました。

別の硫酸化多糖である硫酸デキストランは、スルファチドとの結合を強く阻害しましたが、ルイス抗原との結合はほとんど阻害しませんでした。
この違いは、炭水化物の構造や構成している糖に関連していると考えられています。

ピロリ菌の表面タンパク質にフコイダン結合成分が見つかったことから、
ピロリ菌がフコイダンでバリアされた結果、胃細胞への付着が阻害されたと考えられます。


まとめ

フコイダンでピロリ菌の付着をバリアすることで感染を防いでいる、というのは面白い仕組みですね。

たしか、新型コロナウイルスに対する感染予防も研究されていましたね。
バリアできる細菌は他にもあるのかな?と想像が膨らんでしまいます。

別の細菌に関する論文も見つけたら紹介したいなと思います。

では、またの投稿をお楽しみに。  



参考文献 Inhibitory Effect of Cladosiphon Fucoidan on the Adhesion of Helicobacter pylori to Human Gastric Cells, Shibata et al,  J Nutr Sci Vitaminol, 1999, 45, 325-336

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本場・沖縄県で、オキナワモズクやフコイダンの生産と研究開発に積極的に取り組むサウスプロダクトが、その魅力や特性を科学的にわかりやすくご紹介。
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