食物繊維の働きは腸内細菌だけじゃない?腸管を介した新たな作用

フコイダンのお話

野菜や海藻、きのこ類などに多く含まれ、健康維持に役立つ成分として広く知られている食物繊維。
その中でも、腸内細菌によって分解・発酵されるものについては、特に研究が進められています。

近年では、食物繊維の働きは腸内細菌を介したものだけではなく、腸管を構成する細胞との関わりを通じて発揮される可能性も示されています。

そこで今回は、食物繊維の新たな働きについてまとめてみました。

これまで考えられてきた食物繊維の働き

食物繊維は、人の消化酵素ではほとんど消化されない成分です。
以前は「消化されないため栄養にならない」と考えられていましたが、その後の研究により、便通の改善など、健康維持に関わるさまざまな働きが明らかになってきました。

中でも、食物繊維と腸内細菌との関係が特に注目されています。

食物繊維の中には、大腸まで届いた後に腸内細菌によって分解・発酵されるものがあります。
その過程では、短鎖脂肪酸と呼ばれる物質などが生じます。
短鎖脂肪酸は、大腸の細胞のエネルギー源となるほか、腸内環境や免疫機能、エネルギー代謝などとの関わりについても研究されています。

このような研究から、食物繊維の働きは、腸内細菌による分解・発酵と、その過程で生じる代謝産物を介した作用を中心に考えられてきました。




腸内細菌だけじゃない? 食物繊維の新たな働き

これまで、食物繊維の健康への働きを考えるうえでは、腸内細菌による分解・発酵や、その過程で生じる代謝産物との関わりが注目されてきました。
しかし、腸内細菌だけでは説明できない食物繊維の作用についても研究が進められています。

その一例が、シイタケ由来の食物繊維「レンチナン」を用いた研究です。
レンチナンを摂取したマウスでは、大腸の炎症が抑制されることが確認されています。
当初は、腸内細菌の変化がこの作用に関係している可能性が考えられました。
そこで、その作用がどのような仕組みで起こるのかを詳しく調べたところ、腸の表面を覆っている腸上皮細胞が関わっていることが見つかりました。

研究では、腸上皮細胞の受容体「Dectin-1(デクチン1)」がレンチナンを認識すると、炎症シグナルを受け取る受容体「TNFR1」の細胞表面に存在する量が減少する可能性が示されています。
つまり、腸上皮細胞が食物繊維であるレンチナンを認識すると、炎症シグナルを受け取りにくくなる、という仕組みが考えられました。

このような研究から、食物繊維の作用を考える際には、腸内細菌だけでなく、腸上皮細胞など腸管側の細胞との関わりにも目を向ける必要があることが示されています。


フコイダンでも注目される腸管を介した作用

このような腸管を介した作用は、シイタケ由来のレンチナンだけではありません。
海藻由来の多糖類であるフコイダンについても、腸管を介した生理作用が研究されています。

コンブ由来のフコイダンをマウスに経口投与したところ、血中のGalectin-9(ガレクチン-9)が増加することが確認されました。
また、フコイダンを摂取したマウスではアレルギー反応が抑えられ、その作用にGalectin-9が関わっている可能性が示されています。

Galectin-9には、アレルギー反応に関わる免疫細胞「マスト細胞」の活性化を抑える働きが知られています。この研究でも細胞を用いた実験を行ったところ、Galectin-9がマスト細胞の活性化を抑える可能性が示されました。

また、フコイダンを口から摂取した場合に作用がみられたことから、消化管が関与してGalectin-9に影響する仕組みが働いている可能性が考えられています。



このように、フコイダンについても、腸内細菌との関係だけではなく、腸管を介して免疫反応に影響する可能性が研究されています。

なお、今回紹介した研究は主に動物実験をもとにしたものであり、ヒトでも同じ仕組みが働くのかについては、今後の研究が期待されます。

まとめ

  • ・食物繊維は、腸内細菌による分解・発酵を介した働きが注目されてきた。
  • ・一方で、腸上皮細胞など腸管側の細胞が関わる作用も研究されている。
  • ・シイタケ由来の食物繊維レンチナンでは、腸上皮細胞の受容体を介した腸炎抑制の仕組みが研究されている。
  • ・フコイダンについても、腸管と免疫反応との関わりが研究されている。

食物繊維というと、「腸内細菌のエサ」というイメージを持つ方も多いかもしれません。

今回ご紹介した研究からは、食物繊維の働きを考えるうえで、腸内細菌だけでなく、腸上皮細胞など腸管そのものとの関わりにも目を向けることが大切だと感じました。

フコイダンについても、これまで知られてきた腸内細菌との関係に加えて、腸管を介した作用という新たな視点から研究が進められています。

食物繊維やフコイダンが腸内でどのように働いているのか。今後、作用の仕組みがさらに明らかになることで、食物繊維や多糖類の生理機能について、より深く理解できるようになることが期待されます。
今後もこうした研究の進展に注目していきたいですね。

今回の内容が少しでも参考になればうれしいです。  

参考文献

水野雅史, 総説 腸管を介した食物繊維の新規生理活性機構の解明, Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 69 (5), 203–211, 2022.

Tanino et al. F-fucoidan from Saccharina japonica is a novel inducer of galectin-9 and exhibits anti-allergic activity. J Clin Biochem Nutr. 2016;59(1):25-30.

 

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