目の炎症を和らげる!ドライアイに対するフコイダンの作用

フコイダンのお話

フコイダンは体の中のさまざまな炎症を抑えるはたらきがあります。
目が乾燥すると目の細胞が炎症を起こしますが、
この炎症もフコイダンで和らげることができるのか、という研究が行われています。

今回は、ドライアイの症状に対するフコイダンの作用についてまとめてみました。

ドライアイになると目の細胞が炎症を起こす

私たちの目は常に涙で潤っています。
涙には水分の他に、塩分や脂質などの成分が含まれています。
目が乾燥して水分が蒸発すると、水分以外の成分の濃度が高くなってしまいます。
涙の成分濃度が変わると、目の細胞が傷ついてしまい、炎症(目の充血や痛み、かゆみ)を起こします。


フコイダンは体内で炎症を抑えるはたらきが知られていることから、
目の細胞で起きる炎症にも作用するのか、ということが調べられました。
フコイダンは、アカモクという海藻から抽出されたものが使われました。


フコイダンは、角膜細胞のダメージを軽減させる

目にはさまざまな組織がありますが、目の中央の黒目の部分は角膜と呼ばれています。
ドライアイによって傷ついた細胞はアポトーシス(細胞の自然死)することが知られています。

角膜細胞を培養して、ドライアイによって涙の成分の濃度が高くなった時と同じ条件にし、
フコイダンを添加した時の様子を観察しました。

その結果、何も添加しなかった細胞は、生存率が2倍減少しました。
フコイダンを添加した細胞は、生存率の減少が軽減されました。

また、角膜細胞のアポトーシスの割合を調べた結果、
何も添加しなかった場合はアポトーシス細胞が10倍以上増加しました。
フコイダンを添加した細胞は、アポトーシス細胞の増加が軽減されました。

この現象をもう少し詳しく調べると、
フコイダンはアポトーシスを促進させるタンパク質、抑えるタンパク質の発現バランスを調整していることがわかりました。

フコイダンは、涙腺細胞のダメージを軽減させる

ドライアイ疾患のあるラットにフコイダンを7日間、経口投与し、涙の分泌量を調べました。
その結果、涙の分泌量の低下は、フコイダンによって軽減されました。

ドライアイの状態では、
涙を分泌する涙腺という場所の細胞もアポトーシスによってダメージを受けています。
正常な場合と比べるとドライアイの状態では、涙腺のアポトーシス細胞は増加しますが、
フコイダンを投与するとアポトーシス細胞の増加が軽減されました。

フコイダンは、角膜の表面のなめらかさを保つ

ドライアイになると、目の表面がなめらかではなくなります。
この「なめらか具合」をフコイダン投与の有無で調べた結果、
フコイダンを投与することで、ドライアイによって起こる角膜表面のでこぼこを軽減させることがわかりました。

また、ドライアイによって角膜のアポトーシス細胞は増加していましたが、
フコイダンを投与するとアポトーシスの細胞数の増加が軽減されました。
(先ほども角膜細胞のアポトーシスの軽減に触れましたが、先ほどは培養細胞での実験、ここでは動物実験での結果となります。)


まとめ

ドライアイのときのフコイダンの作用を調べた結果、以下のことがわかりました。

  • ・フコイダンを添加すると、角膜細胞のアポトーシスが軽減した。(細胞実験)
  • ・アポトーシスの軽減は、関連タンパク質の発現をフコイダンが調整している。
  • ・フコイダンを投与すると、涙の分泌量の低下が軽減し、涙腺細胞のアポトーシスが軽減した。(動物実験)
  • ・フコイダンを投与すると、角膜表面のでこぼこが軽減し、角膜細胞のアポトーシスが軽減した。(動物実験)

フコイダンは保湿のイメージがありますが、今回の参考文献の内容としては
「ドライアイによって起きる目の細胞の炎症を抑える」作用がポイントになっていました。

ドライアイによるダメージはあるものの、フコイダンなしに比べると、
フコイダンありの方がダメージの程度が抑えられた、ということです。

フコイダンが持つ炎症を抑える作用は、目の細胞でも行われることがわかりました。
あくまで今回の内容は「アカモク由来のフコイダン」です。
他の海藻由来のフコイダンでも同じ作用があるのかは調べる必要がありますが、
炎症を抑える作用があるのなら、同じ効果が期待できるのではと考えられます。

今回の内容が参考になれば幸いです。


参考文献

Su-Bin Park et al, The Effects of Sargassum horneri Extract and Fucoidan on Tear Hyposecretion and Ocular Surface Injury in Rats with Dry Eye Diseases, Curr. Issues Mol. Biol. 2023, 45, 6583–6592.

 

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