フコイダンと銀の相乗効果!銀を含むフコイダンの抗菌・抗ウイルス作用のしくみ

フコイダンのお話

寒くなると気をつけないといけない風邪対策。
フコイダンにはウイルス感染を予防する作用が明らかになっていますが、
フコイダンの構造に「銀」を組み込むことで、その作用が強くなるそうです。

銀には抗菌作用があることから「銀イオン」が配合された除菌スプレーが多く売られています。
この銀とフコイダンが合わさった、”銀が組み込まれたフコイダン”の研究が行われています。

今回は、フコイダンの抗菌・抗ウイルス作用についてまとめてみました。

フコイダンと銀イオン:抗菌・抗ウイルス効果のはたらき

海藻に含まれているフコイダンには免疫調節作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用などの生理活性があり、ここ数十年で大きな注目を集めています。

オキナワモズク由来のフコイダンでは、デングウイルス(デング熱を引き起こすウイルス)やニューカッスル病ウイルス(主に鳥類に感染するウイルス)の感染を阻害することが報告されています。

また、さまざまな海藻由来のフコイダンが新型コロナウイルスの感染を阻害することが報告されています。
さらに、フコイダンはウイルスだけではなく、菌(大腸菌や黄色ブドウ球菌)に対しても抗菌作用を発揮します。

銀(Ag)には、幅広い殺菌作用、有効性、低毒性があることから広く研究されている物質で、さまざまな用途で消毒剤として使用されています。
銀の抗菌作用は、主に銀イオン(Ag+)によるもので、銀イオンはタンパク質やDNAに結合して活性酸素種(非常に反応性の高い分子)を生成することで、タンパク質やDNAを機能的に阻害します。

フコイダンの抗菌効果を高めるために、フコイダンの構造内の硫酸基という部分に銀イオンを添加して、その抗菌性、抗ウイルス性を調べました。



一般的なフコイダンの抗菌・抗ウイルス作用:新型コロナウイルスの感染抑制と大腸菌の増殖抑制

新型コロナウイルスは、ヒトの細胞表面にあるへパラン硫酸という部分にくっつくことで感染します。
このヒト細胞にくっつくことを、フコイダンが阻害しているかどうかを調べました。

その結果、フコイダンは10〜1,000ng/mLの濃度範囲で用量依存的にウイルスとヒト細胞の結合を抑制しました。

また、フコイダンを脱硫酸化する(構造から硫酸基を外す)と、この抑制効果は消失しました。
これは、フコイダンの構造内にある硫酸基が、新型コロナウイルスとヒト細胞の結合を抑制する効果に必要であることを示しています。


細菌に対するフコイダンの作用も調べました。

その結果、フコイダン(1mg/mL)では大腸菌の増殖を抑制する効果は見られませんでしたが、フコイダン(10mg/mL)では細菌の増殖を部分的に抑制されました。
先ほどの抗ウイルスを示したフコイダン濃度と比べると、抗菌効果を発揮するには、抗ウイルス効果を発揮するよりも高い濃度のフコイダンが必要ということがわかりました。




銀を含むフコイダンの抗菌作用:大腸菌、表皮ブドウ球菌、真菌で増殖を抑制

フコイダンの構造内に銀を入れたもの(Ag-Fuc)をつくり、
大腸菌、表皮ブドウ球菌、真菌(カビの一種)の3種類の菌に対する作用を調べました。

その結果、
大腸菌は、フコイダン50 µg/mLで12時間、100 µg/mLで24時間以上、増殖が抑制されました。

表皮ブドウ球菌は、フコイダン100 µg/mLで6時間、200 µg/mLで24時間増殖が阻害されました。

真菌(カビの一種)は、フコイダン20 µg/mLで36時間、40 µg/mLで60時間以上、増殖が抑制されました。

これらの結果から、銀を含んだフコイダンは、用量依存的に広範囲な微生物の増殖を抑制すること、銀を含まないフコイダンと比較して、低濃度で効果を示すことがわかりました。





銀を含むフコイダンの抗ウイルス作用:新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス感染を阻害

また、銀を含むフコイダン(Ag-Fuc)が新型コロナウイルス感染に阻害効果を示すのかを調べました。
その結果、銀を含むフコイダン(100〜500ng/mL)は、一般的なフコイダン、ヘパリン(陽性対照)と同様にウイルスとヒト細胞の結合を抑制しました。

また、銀を含むフコイダンを段階希釈して、濃度別に新型コロナウイルスへの感染を調べました。
その結果、銀を含むフコイダンは用量依存的な阻害効果を示し、一般的なフコイダンよりも低い濃度で抗ウイルス活性を示しました。
このとき、フコイダンに存在する銀はその抗ウイルス活性に影響を与えないことも確認されました。

さらに、インフルエンザウイルスに対する効果も調べました。
その結果、銀を含むフコイダンは0.0001〜10μg/mLで濃度依存的な阻害効果を示しました。

 

フコイダンと銀の相乗効果:作用強化の仕組みと今後の課題

フコイダンの抗菌作用の仕組みは、主に2つの方法で細菌にダメージを与えると考えられています。
・フコイダンは細菌の表面にくっつき、細胞にダメージを与える。
・フコイダンに存在する「硫酸基」は負の電荷を持っており、この部分が周囲の栄養素を引き寄せて、細菌が必要な栄養を吸収できなくさせる。

先ほどの実験で、銀を含むフコイダンは一般的なフコイダンの約100倍低い濃度で大腸菌の増殖を阻害しました。
また、大腸菌だけでなく表皮ブドウ球菌、真菌(カビの一種)の増殖も阻害したことから、
銀を含むフコイダンは、強力で広範囲な抗菌効果を発揮すると考えられます。

銀を含むフコイダンの抗菌活性は、主に銀に起因すると考えられています。
銀は細菌のタンパク質や核酸(遺伝子情報を持つ物質)に含まれる「チオール基」という部分にくっつきます。銀が細菌のタンパク質や核酸とくっつくと細菌が生命活動に必要な機能を失います。
この仕組みは、多くの種類の細菌に対して有効なため、銀を含むフコイダンは幅広い細菌種に対して抗菌効果を発揮するのです。

銀を含むフコイダンの抗ウイルス効果は、ウイルスの侵入を妨げる「フコイダン」の働きと、ウイルスそのものにダメージを与える「銀」の働きが組み合わさっていると考えられています。
フコイダンは、「硫酸基」と呼ばれる負の電荷を持った部分を使ってウイルスを捕まえることができます。
ウイルスがフコイダンに捕まると、銀の働きがより効果的にウイルスに作用するようになります。
この組み合わせによって、銀を含むフコイダンは通常のフコイダンよりも強い抗ウイルス効果を発揮する可能性があるのです。

なお、この研究にはいくつか課題があります。
・銀を含むフコイダンの抗ウイルス効果と分子量の関係が不明。
・調べた細菌や真菌、擬似ウイルスの種類が限られており、幅広い効果の検証が必要。
・擬似ウイルスを使用したため、ウイルス成熟や放出への影響を評価できなかった。
(※擬似ウイルス:実験のために人工的に作られた無害化されたウイルス)
・主に試験管内(in vitro)での実験だったため、実環境(in vivo)での効果検証が必要。


まとめ

フコイダンの構造内に銀を組み込んで抗菌・抗ウイルスを調べた結果、以下のことがわかりました。

  • ・銀を含むフコイダンは、大腸菌、表皮ブドウ球菌、真菌(カビの一種)の増殖を抑制し、抗菌作用を示した。
  • ・銀を含むフコイダンは、ウイルスとヒト細胞の結合を抑制し、抗ウイルス作用を示した。これは、一般的なフコイダンよりも低い濃度で発揮された。
  • ・銀を含むフコイダンは、インフルエンザウイルスの感染も阻害した。
  • ・銀を含むフコイダンの抗菌作用は、主に銀に起因すると考えられている。
  • ・銀を含むフコイダンの抗ウイルス作用は、フコイダンと銀の働きが組み合わさっていると考えられている。


「フコイダン」と「銀」の働きをお互いに打ち消さずに組み合わさってより強くなっている、というところが素晴らしいですね。
他にどんな菌やウイルスに作用するのか、今後の研究に期待です。

今回の内容が参考になれば幸いです。

 

参考文献

Akira Iwata et al, Incorporation of Silver into Sulfate Groups Enhances Antimicrobial and Antiviral Effects of Fucoidan, Mar. Drugs 2024, 22, 486. ※一部図を抜粋し日本語に編集

 

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