コレステロール値を下げる!フコイダンが脂質成分に与える影響

フコイダンのお話

フコイダンにはさまざまな生理活性があり、その一つにコレステロール低下作用があります。
コレステロールは体に必要な脂質成分ですが、不足したり過剰になったりすると健康に悪影響を及ぼします。
特に過剰になってしまうと生活習慣病のリスクが高くなってしまうことは、よく知られていますよね。

今回は、フコイダンのコレステロール低下作用についてまとめてみました。

フコイダンのコレステロールに関するこれまでの研究

フコイダンのコレステロールに関する研究は、1960年代にコレステロール上昇抑制作用の報告があります。
1990年代には、海藻多糖類に含まれるフコイダンのコレステロール低下作用について調べられ、血液中の脂質成分が有意に低下したと報告されています。

オキナワモズク由来フコイダンに関する研究も、1990年代から見られるようになりました。
その中で、上原らが報告したオキナワモズク由来フコイダンのコレステロール低下作用は、当時は先進的な研究だったと言われています。
ここでは、上原らが報告した研究について紹介したいと思います。

ラットに与えた高コレステロール食に、オキナワモズク、オキナワモズク由来フコイダン、対照として多糖類の一種であるセルロース、グァーガムをそれぞれ添加し、血液や肝臓の脂質成分に影響を与えるのかを調べました。



体重増加への影響はなし:飼料摂取量と臓器重量の変化

それぞれの飼料を与えたラットの体重増加量、飼料摂取量、飼料効率、肝臓および盲腸重量を調べました。

その結果、体重増加量は、飼料間で有意な差は見られませんでした。
飼料摂取量は、オキナワモズクとフコイダンを添加したグループがグァーガム添加より有意に高い値を示しました。
飼料効率は、差は見られませんでした。

また肝臓重量は、オキナワモズクとフコイダンが、グァーガムよりも有意に高い値になりました。
盲腸重量は、フコイダンが最も高い値を示しました。

これらの結果から、オキナワモズクとフコイダンを飼料に添加すると、体重増加には影響は与えないが、飼料摂取量が増え、それに応じて肝臓重量と盲腸重量が増えることが推察されます。



血液中の脂質濃度への影響:オキナワモズクとフコイダンでコレステロール低下

それぞれの飼料を与えたラットの血液中(血清中)の脂質濃度を調べました。
脂質には、コレステロール、中性脂肪、リン脂質が主な成分として知られています。

遊離コレステロールは、体内で利用されるコレステロールの一種です。
オキナワモズクがセルロースよりも有意に低い値となりました。

HDL-コレステロールは、善玉コレステロールと呼ばれており、体内で余分なコレステロールを回収する役割を持っています。
飼料間で有意な差は見られませんでしたが、数値だけを見ると、オキナワモズクとフコイダンで高い値になりました。

総コレステロール濃度は、体内のすべてのコレステロールの合計です。
オキナワモズクとフコイダンがセルロースよりも有意に低い値を示しました。

リン脂質濃度は、細胞の機能を正常に保つために必要不可欠ですが、過剰な場合は病気のリスクを高めることがあります。
オキナワモズクがセルロースよりも有意に低い値となりました。


総コレステロール濃度について、経日変化を図に示しました。
オキナワモズクとフコイダンの総コレステロール濃度は、セルロースよりも有意に低い値になったことが確認されました。



これらのことから、オキナワモズクとフコイダンはコレステロールを低下させる作用があり、
リン脂質にも作用することが考えられます。
有意差はなかったものの、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)がオキナワモズクとフコイダンで高い値になったことから、これらが体内でコレステロールを効率的に処理し、血管を守る働きを行っている可能性が考えられます。

 

肝臓の脂質濃度への影響:オキナワモズクとフコイダンでコレステロール低下

それぞれの飼料を与えたラットの肝臓内の脂質濃度を調べました。

その結果、総コレステロール濃度は、オキナワモズクとフコイダンがセルロースよりも有意に低い値を示しました。

またリン脂質濃度は、オキナワモズクとフコイダンがセルロースよりも有意に低い値を示しました。

これらのことから、血液中の脂質濃度への影響と同様に、オキナワモズクとフコイダンは肝臓内でもコレステロールを低下させる作用があり、リン脂質にも作用することが考えられます。


排泄物への影響:量は増えたが成分に変化なし

それぞれの飼料を与えたラットの排泄物についても調べました。

その結果、オキナワモズクの糞排泄量(乾物中)で有意に高い値を示しました。

中性ステロールは体内で吸収されなかったコレステロールが糞中に排出されたものです。
また胆汁酸は肝臓でコレステロールから生成される消化液の一部です。
胆汁酸の排出が増えると、コレステロールがより多く消費され、体内コレステロールレベルの低下につながる可能性があります。

中性ステロールと胆汁酸の排泄量は、飼料間で有意な差は見られませんでしたが、
数値だけを見るとフコイダンが最も低くなりました。

このことから、オキナワモズクは体内で余分なコレステロールをより多く排泄し、
コレステロールのレベルを低下させる可能性があることが考えられます。
しかしフコイダンでは、有意差はなかったものの糞中の中性ステロールと胆汁酸の排泄量が最も低かったことから、コレステロールの排出が少ないことが推察され、体内でのコレステロールの管理に違いがある可能性が考えられます。


まとめ

ラットに高コレステロール食を与え、それにオキナワモズク、フコイダン、セルロース、グァーガムを添加した結果、以下のことがわかりました。
(一部、個人的な考察も入っています。)

  • ・オキナワモズクとフコイダンを飼料に添加すると、体重増加には影響は与えないが、飼料摂取量と肝臓重量、盲腸重量が増加した。
  • ・オキナワモズクとフコイダンは血液中と肝臓内のコレステロールを低下させる作用があり、リン脂質にも作用することが考えられた。
  • ・血液中では有意差はなかったものの、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)がオキナワモズクとフコイダンで高い値になった。
  • ・オキナワモズクの糞排泄量で有意に高い値を示したことから、体内で余分なコレステロールをより多く排泄し、コレステロールのレベルを低下させる可能性があることが考えられた。


20年以上前の文献なので、情報の更新はされているかと思いますが、
オキナワモズクとフコイダンがコレステロールを低下させる作用が示唆されたデータに関しては、さまざまなところで引用されているのを見かけるので、この文献をピックアップしてみました。

「オキナワモズク由来フコイダン」がコレステロールの低下作用があることを報告したのは、
おそらくこの文献が初めてなのではないかと思います。

今回の内容が参考になれば幸いです。

 

参考文献

上原ら, オキナワモズクから分離したフコイダンが高コレステロール食給与ラットの血清コレステロール濃度に及ぼす影響, 応用糖質科学. 1996. ※データを元に図を作成、一部図を抜粋し日本語に編集
山田信夫, 海藻フコイダンの科学. 成山堂書店, 2006

 

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