海藻に多く含まれているフコイダン。
フコイダンを食品として摂取して、健康に役立てることは広く知られていますよね。
一方で、フコイダンは体の表面である皮膚の老化対策にも役立つ作用もあるみたい。
今回は、フコイダンの皮膚バリア機能についてまとめてみました。
目次
皮膚の老化の原因とフコイダンの可能性
私たちの体の表面にある皮膚。
皮膚のしわ、弾力性の低下、乾燥は、皮膚の老化によって引き起こされています。
皮膚の老化には、内因性老化(自然に起こるもの)と、外因性老化(紫外線、活性酸素種、ストレスなど)があります。
活性酸素種は、体内で生成される化学的に活性な物質のことで、免疫システムの役割がある一方で、過剰になると細胞や組織にダメージを与えます。
外部からの刺激は、コラーゲンの構造を変化させたり、皮膚の老化を加速させて、皮膚細胞内にある肌に弾力を与えるタンパク質(コラーゲン、エラスチン)のレベルを低下させます。
また活性酸素種は、コラーゲン分解酵素の活性を高めて、コラーゲンの合成を抑制してしまいます。
外部からの刺激の1つである紫外線。
紫外線には「UV-A」「UV-B」「UV-C」の3種類があります。
地上に届くのは「UV-A」「UV-B」。
「UV-A」は皮膚の中まで、「UV-B」は皮膚の表面に影響を与えます。
紫外線B(UV-B)は、コラーゲン分解酵素(MMP)の発現を高めます。
コラーゲン分解酵素の活性化は、光老化(紫外線を浴び続けることで引き起こされる老化現象)による結合組織の損傷に大きく関わっています。
紫外線は、コラーゲンの直接分解とコラーゲンの生合成の減少という2つのメカニズムによって正常な皮膚コラーゲンを変化させることが知られています。
これまでの研究で、抗光老化効果のはたらきがある機能性食品や化粧品の成分が調査されており、アカモク由来フコイダンには、抗酸化、抗炎症、皮膚バリア機能のはたらきがあると報告されています。
そこで、アカモク由来フコイダンはヒトの皮膚細胞で抗酸化作用と抗老化作用を示すのか、調べられました。
フコイダンと抗酸化作用:ビタミンCとの比較
外因性老化の一つである活性酸素種には、フリーラジカルと呼ばれる非常に反応性の高い分子があります。
フリーラジカルは、体内で酸化ストレスを引き起こし、老化や病気の原因になることがあります。
抗酸化作用を持つ成分は、フリーラジカルを無害化して取り除く作用があります。
アカモク由来フコイダンに抗酸化作用があるか調べられました。
その結果、フコイダン濃度1,000μg/mLでは、66.35%のフリーラジカルを取り除くことができました。
抗酸化作用を持つ代表的な成分にビタミンCがあります。
ビタミンCと比べると効果は低いものの、アカモク由来フコイダンには抗酸化作用がある、ということがわかりました。
フコイダンは紫外線を当てた皮膚のプロコラーゲン合成を促進する
プロコラーゲンは、コラーゲンが作られる前の状態の物質で、肌のハリや弾力を保つために必要な成分です。
フコイダンがプロコラーゲンの合成にどのような影響を与えるのかを調べました。
皮膚細胞に紫外線を当てて観察した結果、フコイダンのない細胞ではプロコラーゲンの合成は低下しましたが、フコイダンを加えた方はプロコラーゲンの合成が増加しました。
この結果から、フコイダンは紫外線を受けた皮膚細胞に対して、プロコラーゲンの合成を促進する効果があることが示されました。
アデノシンは、陽性対照(明らかに陽性を示すと予想される対照)として使用されました。
*印は、紫外線を当てたサンプルのみを見た場合、一番左の何も処理しなかった場合と比べて、有意差があることを示しています
フコイダンは紫外線を当てた皮膚でコラーゲン分解酵素を抑制する
MMP-1とMMP-3は、コラーゲンを分解する酵素で、皮膚の老化に関わっています。
フコイダンがこれらの酵素に与える影響を調べるために、紫外線(UV-B)を当てた皮膚細胞にフコイダン処理を行う実験を行いました。
その結果、フコイダンを処理した細胞で、MMP-1のレベルが59.53%、MMP-3のレベルが14.51%減少しました。
*印は、一番左の何も処理せずに紫外線を当てた場合と比較して、有意差があることを示しています。
この結果から、紫外線が当たった皮膚細胞にフコイダン処理を行うことで、コラーゲン分解酵素(MMP-1とMMP-3)の活性が低下し、先ほどのプロコラーゲン合成の増加に関連していることが示されました。
フコイダン配合ローションが皮膚バリア機能を改善
さらに、フコイダンが皮膚のバリア機能にどのような作用をもたらすのかを調べるために、フコイダンを含むローションと含まないローションを3週間使用して、皮膚からの水分蒸発量を測定して比較する臨床試験を行いました。
その結果、フコイダンを含むローションを3週間使用したあと、皮膚バリア機能が改善され、水分蒸発量が74.14%減少しました。
一方、プラセボ(フコイダンを含まないローション)を使用した場合も水分蒸発量が減少しましたが、フコイダンありよりも少なく、57.28%の減少にとどまりました。
*印は、同じ時期のプラセボ(フコイダンを含まないローション)と比較して有意差があることを示しています。
この結果から、フコイダンを含むローションの使用が皮膚バリア機能を改善する効果があることが示されました。
まとめ
アカモク由来フコイダンがヒトの皮膚細胞で抗酸化作用と抗老化作用を示すのか調べた結果、以下のことがわかりました。
- ・紫外線は、コラーゲンの直接分解とコラーゲンの生合成の減少という2つのメカニズムによって正常な皮膚コラーゲンを変化させることが知られている。
- ・フコイダン濃度1,000μg/mLでは、66.35%のフリーラジカルを取り除くことができ、アカモク由来フコイダンに抗酸化作用があることがわかった。
- ・プロコラーゲンはコラーゲンが作られる前の状態の物質。フコイダンは紫外線を受けた皮膚細胞に対して、プロコラーゲンの合成を促進する効果があることが示された。
- ・紫外線を受けた皮膚細胞にフコイダン処理を行うと、コラーゲン分解酵素(MMP-1とMMP-3)の活性が低下した。
- ・フコイダンを含むローションを3週間使用したあと、水分蒸発量が74.14%減少した。(臨床試験)
フコイダン入りの化粧品も多く販売されていますよね。
フコイダンの作用を正しく理解して、フコイダン商品を選んでいただけたらなと思います。
今回の内容が参考になれば幸いです。
Jung-Wook Kang MS et al, The effects of fucoidan-rich polysaccharides extracted from Sargassum horneri on enhancing collagen-related skin barrier function as a potential cosmetic product, J Cosmet Dermatol. 2024;23:1365–1373. ※一部図を抜粋し日本語に編集