フコイダンは天然の防腐剤にもなる!?フコイダンの抗酸化作用が油脂を長持ちさせるしくみ

フコイダンのお話

海藻に含まれているフコイダンには、抗酸化作用(酸化を抑えるはたらき)があります。

抗酸化作用は老化を防ぐはたらきとして知られているため、
フコイダンを摂取して健康に役立てることができます。

一方で、このフコイダンを食品に添加して、
その食品の酸化を防ごうという研究も行われています。

今回は、フコイダンを添加した食品の保存試験についてまとめてみました。

 

天然の抗酸化物質として注目されているフコイダン

フコイダンにはさまざまな機能性がありますが、その中に「抗酸化作用」があります。
抗酸化作用は、体内の細胞にダメージを与える分子(フリーラジカル)から守ってくれるはたらきです。

老化を遅らせたり、病気のリスクを減らしたりすることが期待されていて、
健康を維持するのに役立ちます。
抗酸化作用は、私たちの体だけでなく、食品の劣化も防ぐはたらきがあります。

食品の例として、バターをとりあげます。


バターが劣化する原因は酸化(物質が酸素と反応すること)です。
酸化がどのくらい進んでいるかは、「酸価さんか」と「過酸化物価かさんかぶつか」という指標で確認できます。
(酸化と酸価はどちらも「さんか」ですが、違う意味です。)

バターが酸化すると、油の成分が分解されて「過酸化物」が生成されます。
その後、さらに酸化が進むと、過酸化物も分解されて遊離脂肪酸ゆうりしぼうさんが生成されます。
遊離脂肪酸は、もともと油の成分にくっついていたものが酸化の影響で外れてしまったものです。
この遊離脂肪酸が増えると「酸価」の数値が高くなります。

バターなどの油脂を多く含む食品は、この2つの数値から、品質や劣化の程度を確認しています。

食品の酸化を防ぐために、食品添加物として抗酸化物質が使われていますが、
最近では、天然由来の抗酸化物質に置き換えようという傾向が高まっています。
そこで、抗酸化作用をもつフコイダンが注目されているのです。

フコイダン添加のバターは、酸化がゆるやかになる

バターにフコイダンを添加して、60日間の保存状態を観察した研究が報告されています。

添加するフコイダンは、褐藻類のマジリモク(別名:ホソバモク)由来のものが使われました。
フコイダン粉末を0.05%、0.1%、0.3%、0.5%の濃度に調整して、バターに添加。
比較のため、フコイダンを含まない対照群もつくりました。

まず、「酸価」の結果について。
酸価は、数値が高いほど、酸化が進んでいることになります。
フコイダンを含むバターは、含まないものよりも酸価が低くなりました。

すべてのサンプルで、時間の経過とともに酸価が上がっていきましたが、
保管して60日目の酸価は、フコイダンを含まないバターが一番高くなり、
0.5%フコイダンを添加したバターが一番低くなりました。

研究文献のデータをもとに作成したグラフ (※誤差の範囲や統計的な有意差の情報は省略しています)


次に、「過酸化物価」の結果について。
過酸化物価も、数値が高いほど、酸化が進んでいることになります。
フコイダンを含むバターは、含まないものよりも過酸化物価が低くなりました。

過酸化物価は、保管して40日目までは全てのサンプルで数値が上昇し、
40日目から60日目の間は減少しました。
これは、酸化の最初の段階で生成される過酸化物が、
さらに酸化が進むことによって分解されたからと考えられます。

研究文献のデータをもとに作成したグラフ (※誤差の範囲や統計的な有意差の情報は省略しています)


この結果から、フコイダンをバターに添加すると酸化は進むものの、
その速度はゆるやかになることがわかりました。


フコイダン添加のバターは、酸化しにくい

先ほどは酸化の進み具合を見ていましたが、
酸化のしにくさを表す「酸化安定性」というものがあります。
酸化安定性が高いと、酸化しにくいので、バターは長持ちします。

この酸化安定性を調べた結果、
フコイダンを含むバターは、含まないものよりも安定性が増加しました。
フコイダンの濃度の増加とともに、安定性も増加しました。

フコイダン添加のバターは、劣化による味の変化も少ない

ここまでの科学的な数値(酸価、過酸化物価、酸化安定性)をみると、
フコイダンを添加するとバターが長持ちすることがわかりました。
さらに、バターの変化を官能検査(見た目や味、匂いといった五感を使って品質を評価すること)で確認しました。

その結果、フコイダンを含むバターは、
含まないものよりも酸化による色、質感、味への影響が弱くなりました。

保管して0日目はフコイダンを含むバターと含まないバターに味の違いはありませんでした。
しかし、時間の経過とともにフコイダンを含まないバターの方が酸味が強くなり、
0.5%フコイダンを添加したバターでは変化が最も弱くなりました。

 

まとめ

フコイダンをバターに添加して60日間、酸化の状態を調べた結果、以下のことがわかりました。

  • ・酸化の指標である「酸価」と「過酸化物価」は、フコイダンを添加したバターで低くなった。→フコイダンを添加すると、酸化がゆるやかになった。 

  • ・酸化のしにくくさを表す「酸化安定性」は、フコイダンを添加したバターで高くなった。→フコイダンを添加すると、酸化しにくくなった。

  • ・五感で品質を見る「官能検査」では、フコイダンを添加したバターは変化の影響が弱かった。→フコイダンを添加すると、劣化による味の変化が少なかった。


このことから、バターにフコイダンを添加するとフコイダンの抗酸化作用のはたらきで、
バターが長持ちしたと考えることができます。
つまり、フコイダンは食品保存用の抗酸化剤として使用できる可能性があります。

試験の中ではフコイダンの濃度が高くなるほど、保存状態も良くなっていたことから、
フコイダンの濃度が高いほど抗酸化作用も強くなると考えられます。


個人的な感想を少し。

官能試験でフコイダンを含むバターと含まないバターの味の違いを比べると、
フコイダンを添加したばかりの保存初日は味に違いはなかったとありました。
オキナワモズク由来のフコイダンは、そのままでも磯のような風味を感じるので、
食品に添加するときには香りをつけた方が摂取しやすい場合があります。

今回の試験はマジリモク(別名:ホソバモク)由来のフコイダンを使っているので、
オキナワモズク由来のフコイダンとは風味が違うのかなと思いました。
マジリモク(別名:ホソバモク)由来のフコイダンを食べたことがないので
あくまで推測ですが、今回の内容で少し気になった部分です。(ご参考までに)

では、またの投稿をお楽しみに。  


参考文献

Ahmad Alipour et al, Studying the shelf life of butter containing fucoidan, by evaluating sensory and chemical properties, Food Sci Nutr. 2023;11:2956–2963.

 

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