フコイダン研究の立役者!?フコイダンを分解する酵素たち

フコイダンのお話

こんにちは。

フコイダンの研究は日々更新され、どんどん新しいことが明らかになってきていますが、
研究が進むようになったきっかけの一つに、
フコイダンの構造が解明できたことが大きいと言われています。

フコイダンの構造を解明するために用いられたのが、フコイダンを分解する「酵素」。

今回は、フコイダン研究の影の立役者といっても過言ではない「フコイダン分解酵素」の過去の研究についてまとめてみました。

はじめに

フコイダンは食物繊維の仲間です。
ヒトの体内では消化・吸収も行われず、そのまま体外に排出されると考えられてきました。

ところが、水産生物や海洋環境中にはフコイダンを分解する酵素や、その酵素を生産する細菌が存在しています。
1996年に初めてフコイダンの化学構造が明らかにされたのも、これら酵素や細菌の働きによるものでした。

酵素によってフコイダンを細かく分解することで、
フコイダンにはどのような構造が含まれているのかを調べることができたのです。

フコイダンを分解することができる細菌は、「資化性細菌」と言われています。

『酵素』とは:消化・吸収・代謝など、体の中で起こるさまざまな化学反応を助ける働きをするタンパク質。

『資化性』とは:ある化合物を栄養源として利用すること。フコイダンを分解する細菌は、フコイダンを栄養源として利用するためにフコイダンの消化(分解)を行います。

 

フコイダンに作用する酵素

海産生物が持つ分解酵素

①アワビ
1976年にアワビが持つ酵素が調べられました。その結果、アワビの肝すい臓からガクトフカナーゼ、フコシダーゼ、ガラクトフカンスルファターゼ、アリルスルファターゼ、ガラクトシダーゼという酵素が検出されました。

②キタムラサキウニ
1984年にウニが持つ多糖類の分解活性が調べられました。その結果、キタムラサキウニの消化管にフコイダンなどの様々な多糖類を分解する働きがあることがわかり、フコイダン分解酵素の存在が示唆されました。

③ホタテガイ
1992年にホタテガイが持つ酵素が調べられました。その結果、ホタテガイの肝すい臓からフコシダーゼ、フコイダナーゼという酵素が検出され、フコイダンを分解する働きがあることが確認されました。

④イタヤガイ
1999年にイタヤガイが持つ酵素が調べられました。その結果、イタヤガイの消化腺に、フコシダーゼという酵素の存在が明らかになり、フコイダンを分解する活性を持つことがわかりました。

⑤ナマコ
2002年にはナマコが持つ酵素が調べられました。その結果、ナマコから得た細菌がフコイダンを分解することがわかりました。

 

海水、海底の砂泥中の分解酵素

1981年に、日本沿岸で採取された海水、海底の砂泥、海藻などから32株のフコイダン分解酵素が単離されました。この32株のうち、28株はビブリオ属に分類される「細菌」であることがわかりましたが、残りの4株の分類は不明でした。陸上や淡水域からは、フコイダンの分解細菌は単離できませんでした。

1984年に別の研究が行われ、海砂に存在するフコイダン分解酵素が調査されました。その結果、5株のフコイダン分解細菌を得ることができました。この5株の細菌には、フコイダンを分解する酵素(フコイダナーゼ)の存在が確認され、それぞれN-5、N-23、N-24、N-46、N-47と名付けられました。


ビブリオ菌を利用した分解酵素の生成

まだフコイダンの構造が決定できていない時代には、その構造決定の研究に欠かせないフコイダン分解酵素を効率よく得る方法も調べられました。
その方法の一つとして、細菌にフコイダン分解酵素を意図的に作らせようとした研究があります。

1992年に、N-5株(ビブリオ菌に分類される細菌)を利用してフコイダン分解酵素の生産について調べられました。
その結果、フコイダナーゼとフコイダンスルファターゼを誘導的に生産させることができました。
この2つの酵素は、活性や安定性はほぼ同じ性質を持っていました。

化学構造決定に役立ったフコイダン分解細菌

1996年、初めてフコイダンの化学構造が明らかにされた時に貢献したのが「資化性細菌」です。
これらの細菌は、フコイダンをオリゴ糖単位で切断できる酵素を生産できるため、フコイダンの構造決定に利用することができました。

また、これらの細菌はこれまでに発見されていた細菌とは全く新しいものだったため、新しく命名が行われました。

 


例えば、Fucobacter marina という細菌が、硫酸化フコグルクロノマンナン分解酵素Iなどの4種類の酵素を生産して、それぞれガゴメ由来のフコイダンを分解します。

初めて化学構造が解明されたのは、ガゴメ由来フコイダンだったこともあり、上の表にガゴメが多いのも納得です。

これらのフコイダン分解酵素は、すでに生産方法が確立されているものもあります。

 

『オリゴ糖』とは:糖質の最小単位である単糖が2個から10個程度つながったもの。

『基質』とは:酵素の作用を受けて分解などの化学反応を起こす物質のこと。

 

まとめ

今では当たり前のように、フコイダンの構造を前提として機能性などの研究が進められていますが、そもそものはじまりはフコイダンの構造を決定するために、分解酵素を探すところから始まっていたのですね。

研究っていろんなところで繋がっているんだなとしみじみ感じました。

では、次の投稿をお楽しみに。

参考文献

山田信夫, 海藻フコイダンの科学. 成山堂書店, 2006

 

 

イメージテキスト

本場・沖縄県で、オキナワモズクやフコイダンの生産と研究開発に積極的に取り組むサウスプロダクトが、その魅力や特性を科学的にわかりやすくご紹介。
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