論文解説!モズク由来フコイダンがNK細胞に与える影響について

フコイダンのお話

こんにちは。

6月15日に学術論文「Marine Drugs」に、サウスプロダクトが行なった研究成果が掲載され、
その後、メディアでも紹介いただきました。

今回は、この研究内容について詳細をまとめようと思います。

はじめに

フコイダンは褐藻類に含まれている硫酸化多糖の総称で、
その化学構造は海藻の種類によって異なります。
フコイダンの主な原料にはコンブ、ワカメ、モズクなどの食用海藻が利用されています。

今回の研究で用いたフコイダンは、オキナワモズクを原料としています。
オキナワモズクは琉球列島だけに生育する固有種で、
他の海藻よりも多くのフコイダンが含まれていることがわかっています。
さらに、オキナワモズク由来フコイダンは、さまざまな生理活性が報告されています。

今回は、オキナワモズク由来フコイダンの摂取が、
健常成人(健康な大人)のNK細胞に与える影響について調べるため、ヒト試験を行いました。

『NK細胞』とは:
体に侵入した細菌やウイルスなどを直接攻撃するリンパ球の一種。
免疫反応の初期段階である自然免疫として働きます。

 

試験の方法

材料

試験食品にはオキナワモズク由来フコイダン1.5g/50mLを配合した飲料を用いました。
対照食品(プラセボ)は、フコイダンが入っていない飲料を用いて、
試験食品のフコイダン飲料と外観に違いが出ないように、カラメル色素で調整しました。
見た目を同じにするのは、被験者がどちらを摂取したのか分からないようにするためです。

今回は、それぞれ1日2本(100mL)の飲料を摂取させました。
フコイダン群は、フコイダン3.0g/日を摂取することになります。

『プラセボ』とは:
有効成分を含まない薬のこと。日本語で「偽薬(ぎやく)」と訳されることもあります。
今回は薬の試験ではありませんが、フコイダンを有効成分として調べるため、フコイダンが含まれていない食品をプラセボと呼んでいます。

 

被験者と試験デザイン

被験者は20歳以上〜65歳未満の健康な男女。

被験者を2つのグループに分けて、一方を被験食品摂取群(フコイダン摂取群)、
もう一方を対照食品摂取群(プラセボ群)として試験を実施しました。
このとき、被験者の年齢や性別などで有意差が出ないように、ランダムにグループを分けました。

また、どちらの群になるのかを被験者も被験者に飲料を提供する人も分からないようにしました。
これは、どちらの群になったかを知ってしまうと、それが行動や心理などに影響を与えて、
試験の結果にも影響を与えるおそれがあるためです。

そして、被験者は割り当てられた群の飲料のみを摂取しました。

このような様々な条件を設定した方法を、
「プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験」といいます。



被験者の検査は、
上の図の ①前観察期間、②摂取期間、③後観察期間(ウォッシュアウト期間)の
3期間において行いました。

検査項目

フコイダン摂取前(0週)および、フコイダン摂取後(4、8、12、16週間後)の
NK細胞活性、IFN-γ濃度とIL-2濃度、血液学検査・生化学検査を調べました。

IFN-γとIL-2はサイトカインの一種で、免疫細胞を活性化したり抑制する作用があります。

血液学検査は、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン数などを、
生化学検査は、総蛋白、尿素窒素、尿酸、ナトリウム、カリウムなどを分析し、
血液や尿に含まれている成分を調べました。

結果

NK細胞活性

フコイダン群では、
0週目と比較して、摂取後8週目にNK細胞活性の有意な増加が観察されました。

男女別に見ると、男性被験者は摂取後8週目にNK細胞活性の有意な増加が観察されました。
一方、女性被験者ではNK細胞活性に対するフコイダンの有意な影響はありませんでした。

IFN-γ濃度とIL-2濃度

フコイダンを摂取した期間(4〜12週)をみると、
IFN-γが検出された被験者はフコイダン群で増加傾向でした。
逆にプラセボ群では減少傾向でした。

一方、IL-2濃度は試験期間中、すべての被験者で検出限界を下回っていました。

血液学検査と生化学検査

血液学検査は、成分の数値に有意差はありませんでした。
生化学検査の結果においても、一部の成分(マグネシウムと鉄)に有意差が出たものの、
異常は認められませんでした。

考察

今回の結果から、
オキナワモズク由来フコイダンはヒトNK細胞を活性化させることが明らかになりました。
また、IFN-γが増加傾向になることがわかりました。

一般的にNK細胞の活性化には、マクロファージやヘルパーT細胞によるサイトカイン(IFN-γ、IL-2、IL-12など)の分泌が必要となります。過去の研究では、フコイダンによるNK細胞の活性化にはマクロファージが関与していることが報告されています。

これらのことから、フコイダンによるNK細胞の活性化には、
マクロファージが産生するサイトカイン(IFN-γ)が関与していると推測されました。

『マクロファージ』とは:
体に侵入した細菌やウイルスなどを直接攻撃するリンパ球の一種。
免疫反応の初期段階である自然免疫として働きます。

『ヘルパーT細胞』とは:
伝達された病原体の情報を元に、抗体の産生を促進するなど免疫細胞に指令を出すリンパ球の一種。免疫反応の後期である獲得免疫として働きます。

 

まとめ

オキナワモズクの新たな可能性がまた明らかになりましたね。
日々の健康を維持するためにも、オキナワモズクを日常的に食べたいと思います。

ちなみに、今回の結果で男女に違いが出た理由についてですが、
女性ホルモンが関係しているのではないかという推察もあるみたいです。
今後の研究も気になりますね。

では、またの投稿をお楽しみに。

参考文献

Effects of Ingesting Fucoidan Derived from Cladosiphon okamuranus Tokida on Human NK Cells: A Randomized, Double-Blind, Parallel-Group, Placebo-Controlled Pilot Study(オキナワモズク由来フコイダン摂取がヒトNK細胞に与える影響について:プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間パイロット試験), Makoto Tomori, Takeaki Nagamine, Tomofumi Miyamoto, Masahiko Iha, Mar. Drugs 2021, 19, 340

イメージテキスト

本場・沖縄県で、オキナワモズクやフコイダンの生産と研究開発に積極的に取り組むサウスプロダクトが、その魅力や特性を科学的にわかりやすくご紹介。
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