こんにちは。
新型コロナウィルスの流行から一年以上経ちましたが、終息の気配はまだ見えないですね。
以前の投稿でフコイダンがコロナウイルスの感染を防止するという論文を紹介しましたが、
2020年12月にKenichi Tamamaが発表した別の文献でも情報がありましたので紹介いたします。
この論文は、海藻全体の話となっていてかなりボリュームがあるため、
フコイダンの部分をピックアップしてまとめました。
日本における人口10万人あたりの死亡者数は、西側諸国よりも少なく、
COVID-19の危機は他の国と比べると深刻でありません。
その理由は、様々な要因が考えられますが、
自宅で靴を脱ぐ、公共の場でマスクを着用する、握手や抱擁を頻繁に行わないなど、
日本の日常の習慣が含まれる可能性があります。
この要因の1つに、「海藻が豊富な食事」が考えられています。
日本の1人あたりの海藻消費量は、世界で最も高い値となっていますが、
海藻には、抗高血圧、抗炎症、抗ウイルス効果など、
様々な健康上の利点があることが示されています。
ここでは、
COVID-19 の病態生理および COVID-19 に対するフコイダンの保護効果について説明します。
まず、新型コロナウイルスの表記について整理します。
混乱しそうですが、
ウイルスの名前と、そのウイルスに感染した病名は以下の表記になります。
SARS-CoV-2 : 新型コロナウイルスという「ウイルス名」
COVID-19 : 新型コロナウイルス感染症という「病名」
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)のウイルス学的特徴は、
2002年から2005年に中国や他の国でSARSの発生を引き起こしたコロナウィルス
(SARS-CoV:サーズウイルス)の特徴と類似しており、
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)とSARS-CoV(サーズウイルス)の遺伝情報は、
79.6%同一です。
それぞれのウイルスは、ウイルスの表面にあるスパイクタンパク質を使って
ヒトの細胞表面にあるACE2というタンパク質に結合して細胞に侵入します。
ACE2タンパク質は、呼吸器系や胃腸管など、様々な組織や臓器で広く発現しています。
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)とSARS-CoV(サーズウイルス)は、
そのウイルスが感染した時の症状においても、特徴が似ています。
どちらも、同様の症状(咳や息切れ、発熱や筋肉痛、下痢)を引き起こします。
似たような特徴を持つSARS-CoV-2(新型コロナウィルス)と
SARS-CoV(サーズウイルス)ですが、いくつか異なる性質も指摘されています。
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)のスパイクタンパク質は、
SARS-CoV(サーズウイルス)のスパイクタンパク質よりもACE2タンパク質に
高い親和性を示しています。
これは、SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)の感染率が高いことを説明していると
考えられます。
また、SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)感染は
自然免疫応答(生まれつき備わっている免疫反応)が少なく、
SARS-CoV(サーズウイルス)感染よりも肺でのウイルス複製が高くなります。
これは、SARSよりもCOVID-19の症状が軽度で死亡率が低いが、
感染性が高いことを説明できます。
このように、SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)および、SARS-CoV(サーズウイルス)は
多少の違いはあるものの類似性が高いことから、
過去に出現したSARS-CoV(サーズウイルス)の調査結果は、
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)に適用できる可能性があります。
毎日の食事は体内の炎症過程を変える可能性があります。
古くから食べられてきた日本の食生活は、様々な種類の海藻が豊富に含まれており、
日本の海藻の消費量は、1人あたり年間1kg(乾燥重量)に達します。
海藻は3つのタイプに分類されています。
- 褐藻 : コンブ、ワカメ、モズク、ひじき など
- 紅藻 : のり など
- 緑藻 : アオサ など
韓国人も日本に匹敵するレベルの海藻を消費しています。
韓国の10万人あたりのCOVID-19の死亡者数は、日本よりもさらに少ないことから、
海藻の摂取が関連していると推測できます。
これらの海藻には、抗高血圧、抗酸化、抗炎症作用など、
様々な健康上の利点を備えた活性成分が含まれています。
海藻には、食物繊維の一種であるフコイダンを含むものがあります。
フコイダンは炎症誘発性サイトカインの産生を減少させることにより、抗炎症効果を発揮します。
経口投与されたフコイダンは、進行がん患者の炎症性サイトカインのレベルを低下させました。
マウスで行なった実験においても、肺炎および肺線維症を軽減することが示されています。
オキナワモズクに含まれるフコイダンの構造式
またフコイダンは、in vitro(細胞実験)において、
A型インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)に対して
抗ウィルス活性を示すことも示されています。
最近の研究では、in vitro(細胞実験)において、コンブから抽出されたフコイダンが、
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)に対して強力な抗ウイルス活性を持っていることが
示され、その活性は抗ウイルス薬レムデシビルの活性よりも大きいという結果になりました。
これらのことから、
海藻に含まれるフコイダンはSARS-CoV-2(新型コロナウィルス)に対して
抗ウイルス効果を発揮する可能性があります。
毎日の食事は、腸内細菌叢の組成に影響を及ぼしており、炎症と免疫系にも関連しています。
*腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:微生物群集、腸内フローラのこと)
微生物の不均衡、または腸内毒素症は、免疫調節不全をもたらし炎症性疾患に関係しています。
プロバイオティクスとプレバイオティクスは、どちらも腸内細菌叢による発酵を通じて、
短鎖脂肪酸(SCFA)の生成を誘導することにより、腸内毒素症を改善します。
・プロバイオティクス:乳酸菌やビフィズス菌など、経口摂取後に健康促進効果を生み出す微生物
・プレバイオティクス:経口摂取後に腸内細菌叢を改善する食品成分
・短鎖脂肪酸(SCFA):悪玉菌を抑え、腸粘膜を維持して腸のバリア機能を高める
短鎖脂肪酸(SCFA)は、抗炎症効果を発揮するために重要な仲介役であると推測されています。
経口投与されたフコイダンは、腸内のラクトバチルス菌とビフィズス菌の数を増やすことにより、
プレバイオティクスとして機能します。
寒天、アルギン酸塩、ラミナリンなど、海藻に含まれる他の食物繊維も
プレバイオティクスとして機能します。
さらに、海藻に含まれるオメガ3不飽和脂肪酸は、短鎖脂肪酸(SCFA)を産生させる細菌を
増加させるプレバイオティクスとしても機能する可能性があります。
これらの調査結果から、海藻がプレバイオティクスとして腸内環境を整え、
免疫に役立つ可能性が高いことが示されています。
日本人の習慣や食生活が、知らず知らずに新型コロナウイルスの感染を予防していたのでは?
という興味深い内容ですね。
でも、油断は禁物です。
沖縄も緊急事態宣言が再発され、1日あたりの感染者数が過去最高を更新してしまいました。
マスクや手指消毒はもちろんですが、日頃の食生活も乱れないように気をつけましょう。
参考文献
Potential benefits of dietary seaweeds as protection against COVID-19
(COVID-19に対する保護としての海藻の潜在的な利点)
Kenichi Tamama
Nutrition Reviews Vol. 00(0):1–10 1